近くの田んぼで見つけましたカブトエビです。
埼玉北部の熊谷、東京の町田、静岡中部ではカブトエビを見ることはできませんでしたが、兵庫県明石市で会えて嬉しかったです。埼玉の場合、熊谷の少し北の籠原や本庄あたりでは見られるそうです。
子供のころ田んぼからごっそり獲っては家に持ち帰るとほとんど死んでたとか(酸素不足か)、金魚のいる水槽に入れ、数時間後覗いてみるとゆらゆらとカブトエビの甲だけが浮いてたとか、いろいろ想い出があります。
1999年6月9日に自宅で撮影。最初の画像をとった後、一時カブトエビの姿を見なくなりましたが、今日見たらまた泳いでいるのを見つけました。先月半ばと比べて数は減っています。
先月撮った個体より、甲羅というか背甲の部分の迷彩っぽい模様が目立ちます。実際田んぼで見た時にもそう感じました。色が少し暗くなり、先月のよりワイルドになったというかそんな感じがします。
元気で跳ねまくってたので、まともに撮れたのはこの2枚くらい。ピントがあいません。
頭は斜め右上の方向です。2個の複眼が見えます。この間やや後ろに背器官という謎の(?)器官がありますが、この画像ではほんのちょっとだけ白っぽく見えてるのが判りますでしょうか。
この背甲というやつ、実際に触ってみると判りますが薄いし固くないです。カルシウムを含んでおらず、キチン質と蛋白質から成っているからだそうで。
日本で初めて発見されたのが大正5年(1916年)8月、香川県だそうです。それ以前もいたけど学会とかで発表されなかっただけ? とか思っていると、どうも江戸時代の本にはカブトエビの事が記載されてないそうです。もしかしたらカブトエビは帰化動物で日本に来たのは20世紀に入ってからかも? 別に人に害を加えるわけでもなく、田んぼの稲をかじるわけでもなくということで、目くじら立てて排除されなかった、と同時に特に注目も浴びなかった……のかな? 一時は田んぼの雑草とりとして田んぼに放される等の記事も読んだ覚えがありますが今はどうなっているんでしょうか。
これより3点の画像は、2002年6月12日に撮影したものです。採取場所は明石市内の田んぼ。シャーレに入れ、下に白い紙を敷いて撮影。まだかなり小さいものです。これから脱皮して大きくなっていくんでしょう。
背甲の部分がまだ透明です。胴や脚(?)が透けてみえてます。
シャーレの下に定規をおいてみました。長さ9mmってところですね。
身体をよく動かしてました。くねっているときの画像です。苦しがってたのかもしれない……。
以下は参考になる書籍です。
『自然史双書1 カブトエビ 小さな卵の秘密』は、増補改訂されて『生きている化石〈トリオップス〉カブトエビのすべて』として発売されています。
世界にはアジアカブトエビ、アメリカカブトエビ、ヨーロッパカブトエビ、オーストラリアカブトエビの4種類がいるそうで、日本にはオーストラリアカブトエビを除く3種がいるそうです。
日本のカブトエビはだいたいがアメリカカブトエビで、アジアはそれよりも少なく、ヨーロッパカブトエビは山形県の2ヶ所(だったかな?)のみに住んでいるそうです。
捕まえたカブトエビ、アメリカカブトエビだろうと思ってたんですが、関西にもアジアカブトエビってのがいるらしいです。アメリカカブトエビの血液は無色なのに対して関西や鳥取のアジアカブトエビの血液は赤色だそうです。捕まえたやつは……、どっちだったんだろう?
2015年05月09日追加。
2014年頃に気づいたのですが、日本にいる3種類のカブトエビのうち、アジアカブトエビは在来種だとする記事を見ました。調べてみるとネタ元はたぶんWikipedia日本語版の記事のように思います。
2002年発行の「外来種ハンドブック」には、特にそのようなことは書かれていません。気になったので調べてみました。
いずれも移入種でありと記述される
アジアカブトエビは在来種と考えられ[1]。の文と出典が追加される
なお、アジアカブトエビも中国からの帰化動物という研究もある[3]。の文と出典が追加される
2008年11月以降、「アジアカブトエビは在来種」という記述があります。
この出典は、1973年(昭和48年)4月に長野市で行われた日本応用動物昆虫学会大会の講演要旨のPDF文書を元にしているようです。カブトエビによる水田雑草の生物学的制御という題名です。著者は片山寛之さん。
以下の箇所に在来種と言うことが示されています。手書き文書のコピーのようで見えにくい箇所もあり、ここに引用するに当たって間違えている文字があるかもしれません。公開されているPDF文書なので気になる方は確認してみてください。
アジアカブトエビは、その分布圏から考えると、日本における在来種で、アメリカカブトエビは明らかに侵入種である。
詳しい理由については特に書かれていないこと、内容が1973年で少し古いのではないかというのが気になりました。
図書館でカブトエビに関する本を調べてみました。「日本の淡水生物―侵入と攪乱の生態学」「カブトエビのすべて 生きている化石<トリオップス>」の2冊です。それぞれ1980年、2000年の本です。これも古いと言えば古いのですが、1973年よりは後の書物なので、それ以降に明らかになった事が反映されているかもしれません。
「日本の淡水生物―侵入と攪乱の生態学」では、139頁〜141頁にカブトエビの「侵入の時期と経路」の記事があります。執筆は片山寛之さん。Wikipediaで出典とした1973年の記事の著者と同じ方だと思うのですが確証はありません。そこでは在来種だとは書かれておらず、外来種である事が書かれ、時期と経路についての考察がありました。
「カブトエビのすべて 生きている化石<トリオップス>」(著者は秋田正人さん)では第1章の冒頭、第6章、第8章に、起源や渡来の道筋の推察が書かれています。
両方の本に共通しているのは、上野益三博士による話が書かれている事です。江戸時代もしくは江戸時代以前の本に出てこないというもの。カブトエビより小さくて地味なホウネンエビやカイエビは記載されているのに、カブトエビはないとのことです。
そのほかに「日本の淡水生物」では、1925年までに発見された箇所とその後(おそらくは1933年か?)の拡がり具合も間接的な証拠としています。
1973年の時点では、アジアカブトエビは在来種と考えられていたかもしれません。しかし少なくとも1980年の時点では、日本の3種類のカブトエビはすべて外来種だと考えられています。
国立環境研究所の侵入生物データベースでもカブトエビ類はすべて移入したものと扱われています。
今後研究が進めば、実は在来種だったという証拠が出てくる可能性がある、かもしれません。しかしそのような話が出るまでは、日本のカブトエビは3種類とも外来種と考えられているとするべきだろうと思います。
2015年5月9日現在、Wikipediaのカブトエビの記事は2015年3月27日に変更されたものです。その後内容が書き換わる可能性は十分にあります。
2016年は、日本でカブトエビが発見されて100年目に当たります。発見地である香川などで何らかの行事が行われるでしょうか? すでに計画が始まっているかもしれません。
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