「くーまるウォッチング」では、基本的に身近に居る生き物をとりあげてます。身近といっても新宿駅周辺の「身近」とギアナ高地の「身近」とでは多少(大きく?)意味合いは違ってきますね。ここで取り上げてる兵庫県南部、東播地方というのは溜め池が多く水生植物の宝庫となってるので、こんなの見たことねえよって人も多々居られると思います。その場合、こういうのが身近に見られるというところもあるんだよと紹介している、という風に受けとってもらえると嬉しいです。
とはいえこのページで取り上げる大賀ハスってのは普通身近にはありません。家の裏にあるよってな方はあまりいないでしょう。例えばどんな場所にあるか、Googleで検索してみました。
けっこうありますね。大賀博士と発見の様子などは、蓮文化研究会の大賀博士記念コーナーが詳しく書かれてます。
すでに有名な話ですが、ここでもちょっと書いてみます。1951年、千葉県にある東京大学検見川厚生農場で泥炭層の中からハスの種3個が発見されます。芽が出たものの2株が枯れてしまい、残ったのは1株。その1株は生き延び、翌年開花。一緒に出土した丸木舟が炭素年代測定法により2000年以上前の物であることが分かり、ハスの種も2000年も経過していることが分かった。この出土から開花まで深く関っているのが大賀一郎博士で、このハスに「大賀ハス」という名前が付けられてます。普通のハスとは品種レベルで違うのかな?
花。普通のハスの花とどう違うのか判りませんが、普通のハスの花の場合、花びらのすじが結構目立つとかいうのをどこかで見たような記憶が。大賀ハスのはすじがイマイチハッキリ判らないんだとか。
この花びら、風に吹かれるたびに1枚、2枚とちぎれて落ちていきました……。
つぼみです。こんな形をした盆菓子があったような。左下にくっついてるのはクモですね。
花床(というんかな?)です。果実が中に入ってます。普通のハスのより少ない気がしました。
大賀ハスの葉に手をおいてみたところ。直径は50cmってところでしょうか。まん中には水が溜まってます。
平池公園の大賀ハスが育っているエリア。中にはホテイアオイとミズオオバコが育ってました。ミズオオバコなんて初めて見たです。
ところでこの大賀ハス、平池公園にあった看板によると、大賀博士としては純系を守るために門外不出にするはずだったんだとか。ただ、弟子にあたる鳥取県林業試験場の西尾氏の懇願され種をゆずったり(1957年)してるみたいです。今は自治体同士でやりとりしたり、個人が持ってたりしてるみたいですね。大賀ハスもかなり増えてきて、いきなり絶滅なんて自体になることはなさそうな感じです。
ただ弱ったことに、他のハスの花粉と受精してしまい、交雑種が生まれてるところもあるようですね。花の特徴が普通のハスのものになってしまってるところが何ヶ所かあるようです。例えば秋田市の千秋公園の場合、千秋公園のハスについてというページが公園課の名前で公開されています。2002年8月の段階では単に「ハス」として紹介されているようです。
交雑種というのも面倒というかややこしい問題です。例えば犬の話。柴犬とブルドックの雑種が生まれたとしましょう。私としては「へ〜」の一言で終わらせる問題です。柴犬とブルドックって品種の違いしかないんでしょうし、別にどうでもいい話です。犬のブリーダー(繁殖家)にとってみれば、その人の管理する犬でそういうことがおこったら、その雑種の子を殺すもしくは断種するかもしれません。これについては命とはなにか、純系を守るとはどういうことかといった問題になりますが、ここではそれは取り上げません。
ハスと大賀ハスの交雑種の場合問題になると思われるのは、それを大賀ハスだと紹介していいのかどうかという事だろうと思います。交雑種になった結果、大賀ハスとしての特徴が薄れてしまっては、それを大賀ハスだ、2000年以上昔の種から発芽した古代のハスだと紹介するのは嘘ということになってしまいます。
大賀ハスに浪漫を感じる人というのは、それが2000年以上前にあったハスだということ、出土から開花までのエピソード等に対してロマンを感じているからでしょう。交雑種になってしまってはそのロマンも消し飛んでしまいます。違うハスになってしまってますから。話題性になるようなものでいいんだったら、普通のハスの綺麗なもしくは変わった品種を植えればすむ話です。わざわざ大賀ハスを分根してもらい、育成することはありません。
大賀ハスが大賀ハスでありつづけるために、これを育てようとする方(自治体、学校、個人等)は、格段の配慮が必要になってきます。配慮できないなら、普通のハスやスイレン等で満足しなければならないだろうと思います。
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