ソバアレルギー

前置き

私は医学の知識はあまりなく、専門的なところは判りません。また、専門的なところは研究が進むことにより、発症までの経過や対策等いろいろな点での知識が今後も変化していくのではと思っています。

ここではとりあえず実際に体験したことを重点に置き、ソバアレルギーをもつ人間の事を知ってほしいと思い、書いてみる事にしました。

私個人の主観で書いてあるところも少なくありません。体験談を除き、最新の知識を知りたい方はここの書き込みを鵜呑みにせず、医者や図書館等で調べてみてください。

アレルギー

「アレルギー」という言葉もいろいろと使われます。一例では「キーボードアレルギー」など。これは深刻な人にとっては深刻な問題ですが、病気のアレルギーとはとりあえず関係ないでしょう。ここでは主に食物から発病する食物アレルギーの一つ、ソバアレルギーについてを書きます。

2000年現在、花粉症やアトピー性皮膚炎が国民病であるかのように報道するマスコミを見かける事がありますが、実際知り合いにも何人かいます。アレルギーの原因が空気中を漂う粒子なので、なかなか避ける訳にもいかず、生活はかなり大変そうです。考えようによっては毒ガス兵器と同じような感じですね。

食物アレルギーの場合、症状を防ぐのは花粉症よりも易しいかもしれません。アレルギーの原因になる食物(物質)「アレルゲン物質」を身体に取り込まなければ大丈夫なので、食べ物に気をつければいいんです。ただ、こう書くと話は簡単ですが、実際にはなかなかうまくいきません。卵、牛乳、大豆は食物アレルギーの三大アレルゲンと言われているそうですが、加工食品の中にはこれらの材料が使われてる物も多く、摂らないようにするのは難しいです。各種の肉、米、各種野菜やくだもの等がアレルゲンになる人もいるので、そういう場合一体何を食べればいいのか非常に困ります。他の人が普通に食べることができる食品が本人には毒になってしまうというのは、本人にしてみれば非常に辛いことなのです。

ソバアレルギーの場合、摂ってはいけない加工食品等はかなり限られてきます。食べないようにすませるには他の食物アレルギーの人よりも若干楽、かもしれません。

しかし、いざソバを身体に入れてしまった場合、その症状は極めて酷くなります。亡くなった方もおられます。それだけに、「絶対に」という言葉をつけないといけないほど、ソバを避けなければなりません。

1988年12月、北海道の小学生の子が給食で出たソバを食べてアレルギーの症状が出てしまい、亡くなってしまったという事件を覚えている方もおられると思います。それほどひどい症状をもたらすものなのです。

ソバアレルギーの人口

ソバアレルギーの人は、科学雑誌『Quark』1993年4月号の記事によると、全国で推定3万5千人だそうです。1億2千万人と比べると僅か 0.03% 。他の99.97% の方はまったく平気なわけです。そのため、30歳を過ぎても今までソバアレルギーの人間など会ったことがなかった(そういう病気があること自体知らなかった)という人も実在しています。ソバアレルギーの人というのは少数派ですので、そういう病気に関して無知な人が多いのは仕方ないと思います。かくいう私自身、他の病気に関しては無知なもんですから、そういう方に対して傷つける発言をしてきたかもしれません。

摂ってはいけない食べ物

ソバアレルギーの人はソバ粉の入ったものを避けなければなりません。ソバと名前が付いてても、ソバ粉が入ってなければ大丈夫です。だから中華ソバは大丈夫な訳です。この辺がソバアレルギーを知らない人には判りにくいようですが。

摂ってはいけないもの

気をつけた方がいいもの、店

未確認のもの

外食はなるべくひかえ、加工食品もできれば控えるようにし、自分で料理したものを食べるのがベストだろうと思います。加工食品を買う場合は、原材料名をなるべく見るクセをつけておいた方がいいです。これはソバアレルギーに限った話ではありませんが。

以前は原材料名が判らない食べ物、お菓子などもありましたが、表記についてはかなり改善されているようです。

個人的な体験から

症状:私の場合
最初は口の中、ピリピリとした刺激を感じる。少しして喉がかゆくなる。痰を吐くかのように喉を絞り出すような行動をとらないといられなくなる。すぐに吐き気を催し、吐く。何度も吐くためにかなり力を使い、疲れ切ってしまう。最悪の状態はジンマシンが出る程度で、それ以上はまだ経験していません。

喉がかゆくなるのは気管支の粘膜が腫れあがってしまうからのようです。これがひどくなると気管支を塞ぎ、呼吸困難をおこします。ひどくなると窒息して死亡に繋がります。

他の症状としては全身紫色の水ぶくれ状態になる、血圧降下、意識消失等。呼吸困難にまでなった場合、その時点で治療を行わないと意識障害をおこして死んでしまうとか。

他の人の症状については資料を参考にしています。実際に直接聞いた話ではありません。実は私は私以外でソバアレルギーの人を知りません。住む場所や仕事場などを結構変えているので、いろんな方と知り合いになってはいるんですが。祖父母、親兄弟、従弟、従弟の子供、全員大丈夫なんですけどね。なんなんでしょう、一体。

体験の記録

1960年代後半(〜幼稚園:関西)

観光地の出店:山陽
祖父に瀬戸内海の観光地に連れていってもらう。観光地の店でソバを食べ、泣きながら吐く。(記憶に残る一番古いソバアレルギーの経験)
幼稚園:関西
幼稚園で出るお菓子で「ソバぼうろ」が食べられない。また、花の形をして真ん中に穴が空いていてこげ茶色をしたお菓子も食べられない。

1970年代〜1980年代半ば(〜高校生:関西)

自宅にて
大晦日、年越しソバが食べられない。ほんの一口食べただけで喉の痒みが広がり、カーッ、カーッと喉を絞り出すような行動をとる。お茶をがぶ飲みし、なんとか耐える。中学、高校のころはうどん等他の麺類に変わる。
高校で
先輩の土産物である饅頭を食べたら途端に喉に痒みを覚える。その饅頭はソバ饅頭だった。
修学旅行先:信州
高校の修学旅行は信州の白馬でスキー。信州というとソバの名産なので、事前にソバアレルギーであることを担任に知らせておく。何日目だかの食事がソバになっていたので、一人だけ別の料理に変えてもらう。当日は別室で一人だけ別料理。一人で別室というとひどい事をすると思う人もいるかもしれませんが、私としては本当に助かりました。これくらいの事をしてもらわないとアレルギー症状がでるかもしれないからです。

1980年代後半〜(専門学校生〜社会人:関東、東海)

外食:関東
仕事の都合で外食。先輩と共に近くの和食の店に入る。皆は盛りソバを注文するが私は丼物を注文する。しかし、飯を食ってても口の中がピリピリする。器をちゃんと洗っているのか? それともなんらかの拍子にソバ粉が入ってしまうのか? 症状は軽いので、ソバ粉を丼物にも直接使っている訳ではなさそうだったが…
駅でのソバ・うどん屋:関東
友人と一緒に駅(JRだか私鉄だかは覚えてません)のソバ・うどん屋で飯を食う。当然うどんを頼むが、とりあえずほんの少し食べてみると口の中に刺激が。調理している様子を見てみたら、ソバとうどんを同じお湯で茹でていた。
中華料理屋:関東
仕事時、昼食で近くの中華料理屋へ。麻婆ナスを注文。ナスは半分火が通ってなかったが、我慢して食べる。すぐに口の中がピリピリと刺激を感じてくる。火が半分通ってないナスが原因かと思ったが今までにも別の中華料理で似たような経験があったので不思議に思う。しばらくして胡椒の中にソバ粉を入れているものがある事を知る。(すでに出典不明なので確認できてませんが)
会社の食堂:東海
三交代制で働いてた時の会社の食堂。夜食の中のみそ汁を飲んだ途端に刺激と痒みを感じる。おかしいと思って底のほうをかき混ぜてみると、短いソバが出てきた。食事を途中でやめ、お茶をがぶ飲み。しかし吐き気が徐々に強く、気分も悪くなってきたので仕方なく便所で吐く。その日は仕方なく途中で帰宅。
話によると、昼飯等でソバが出たときには、夕食、夜食のみそ汁の中にわざわざソバを入れてくれるらしい。それからはみそ汁が出るたびに食堂の人にソバが入ってるかどうか聞くようにした。こっちにとっては死活問題だが、食堂の人には重大さをあまり判ってもらえなかった。その後も2回、誤ってソバ入りみそ汁を飲んでしまい、そのたびに吐きもどした。

そば粉を含む食品を食べてしまったらどうするか

気付かずにそば粉を含む食品を食べてしまった場合、口の中がピリピリするなどの刺激で気付くと思います。極少量摂ってしまった場合でしたら、お茶や水等を大量に飲むことである程度刺激感を誤魔化すことができます。他にもご飯を多めに食べるとか。

吐き気がしてきた場合は、無理せずに吐いた方がいいと思います。モノを食べるような場所なら近くに便所があると思いますので。便所が使用中であるなど、どうしようもない場合は…… なんとか考えましょう。建物の裏地、電柱の陰、とにかくなんとかして吐く場所を見つけ、吐いてしまいましょう。

吐く時はだいたい何度か吐き気が襲ってきて、数回に分けて吐くことになると思います。何度も吐いていると口の中が酸っぱくなったり、嫌な臭いで気分が悪くなったりするので、もし水やぬるめのお湯、薄い食塩水等が手に入るようでしたら、それでうがいをするといいです。吐き気が収まって一息ついた後はお茶や水など水分をとっておいた方が楽になると思います。

吐くのは非常に体力を失いますので、仕事中の方はしばらく休みをとるか、早退するのがいいのではと思います。

苦しくて動けなくなったり、息をするのが大変になってきたりなど、危ないと感じたらとにかく救急車を呼ぶのがベストではと思います。近くの人に、ソバアレルギーであること、現在の症状等を伝え、119番を呼んでもらいましょう。見る人が見れば救急車をよぶほどの症状では無かったかもしれません。それだったらそれに越したことはありませんが、もしもという場合もあります。

ソバアレルギーの治療法

2003年1月現在で、そのような方法は聞いたことがないです。

「卵や牛乳アレルギーなどは年とともに治る(outgrow)ことがあるけれど、ソバアレルギーはそういうことはない」というから油断ならない

Quark 1993年4月号 食物アレルギー連鎖 (2)恐怖の呼吸困難 ソバアレルギーで死ぬ より

ということですし、少量を摂って身体を慣らしていくという方法も危険だと思います。他のアレルギーの場合年とともに治るというものは、私自身がそうでした。小さい頃に生のイカ、タコ、卵を食べるとソバアレルギーのような症状(喉が痒くなる)が出てたのですが、20歳を越えてからはどれも大丈夫になったのです。

しかし、ソバアレルギーについては今のところ一生付き合っていくしか方法は無いと思います。私の場合、ソバを食べたいと思ったことは一度も無いので食べられなくても全く構わないんですが。さらに現在住んでいる関西地方はソバよりうどんの方が一般的なので、関東よりもソバに出くわす機会は少ないので助かります。ただ、ソバの本場のような地域に住んでおられるソバアレルギーの人は、とても辛いのではないかと思います。中にはソバ職人の方でソバアレルギーになってしまった人もいるそうで。ぜん息の症状が出るそうです。

ソバアレルギーで困る人間関係

ぶっちゃけた話、ある意味ではアレルギーの症状よりも厄介になるかもしれない人間関係。これで困っている人も多いのではと思います……。

困った人

こういうことを言う奴は死ねこのどアホ

――なんてお下品な言葉は使っちゃいけないざます。いやほら何故かと言うと角が立ちますから。相手がどんな発言をしたからといってそれに付き合ってあげる必要はありません。限度と言うモノもありますけど。

この辺の発言の多くは、だいたいが悪意のないもののハズです。ただ、悪意が無いからこそ逆に取り扱いが厄介だというのもあります。悪意のこもった発言であれば、腹さえ括ればいろいろとアレしたりできるわけなんですが。私自身、納豆が食べられない人に向かって、納豆の良さを延々と説いたことがありますが、相手にとってははらわた煮えくり返る思いだったかもしれません。私も悪意はもちろん無かったんですけれどもね。

アレルギー、特にアトピー性皮膚炎の話では「昔は無かったんだけどね」「そういうの聞かなかったね」という人がいますが、「だからどおした」って感じですかね。昔と今じゃ環境が違うんだし食も変化してるので、以前はなかったモノが最近出てきたってのは別に不思議でも何でもないことです。いや、以前からあったのかもしれませんが、少なかったので誰も気に留めなかったとか、単に変な人というだけで片付けられてたのかもしれません。キツネなどがとりつくなんてのも、アレルギーでショック症状をおこしたりジンマシンが出た人の事をいっているのかもしれない、というのを聞いたことがあります。もちろんそれだけではないと思いますが。

「昔は聞かなかったけど、今は増えてるね、大変だね」と、このへんまで話が進めばまぁ判るかなって感じです。

親を話に持ち出してくる奴は論外でしょう。親は関係ねーだろ、親は(c)公権力横領捜査官『中坊林太郎』

他にも仕事等の上下関係がある場合で、上の人からソバに関して勧められる場合もあるかもしれません。仕事以外でも、友人などから勧められる場合もあるかもですね。昼食にそば屋に連れていかれるとか、手打ちのソバやソバ粉の入ったお菓子を勧められるとか。あるいは上司がソバ打ちが趣味で、食べに来るよう言われるとか。

この辺はなんとか穏便に話をつけましょう。ただ最終的には「食べない」線で話を持っていくというのは鉄則ですね。むりやり食べさせられた場合、おそらく最善の場合でも吐くことになると思います……。相手だって御持てなしの気持ちがあっての事なので、相手の思いも尊重したうえでうまく話を運びましょう。うまく話が運ぶかどうかは相手の人間性にもよりますけどね。嗚呼ややこしい人間関係。

こういう体質の身体になったのは誰が悪いわけでもないので。責められるべき人はどこにもいません(原因が明らかに人為的なものであった場合は話も変わってきます)。その辺を、ソバに限らずアレルギー体質でない人には判ってほしいなと思うわけです。特にソバの場合は私自身が子供のころから身をもって体験してますし、アレルギーの中では症状の激しさがトップクラスという恐ろしいものなので、特に判ってほしいなと思うわけです。

非常に参考になるWebpage

そばアレルギー
たくみさんによるROD&SCREW内のコンテンツ。

私と同じくそばアレルギーのたくみさんが製作されてます。コショウの増量剤としてソバが使われているという件についてのメーカー等の回答、海外での注意、避けなければならないものリスト、参考文献等、非常に内容が充実しています。ソバアレルギーの方も、そうでない方も、是非行ってみてください。

参考資料

Quark 1993年4月号 No.130
発行:講談社
定価:税込み830円(1993年当時)
記事:食物アレルギー連鎖 (2)ソバアレルギーで死ぬ P36,37
人間環境白書1 そこが知りたいアレルギー
発行:学習研究社
定価:人間環境白書全6巻税込み15000円(1996年当時)
ソバ、米、ハッカアレルギーは死に至る P18,19
mailto:other@coomaru.com
公開:2000年4月4日
更新:2004年5月6日
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